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■scraps #6
 狭いバスルームだった。湯船も小さく、足ものばせない。が、体を温めるだけなら十分なものだ。
 肩まで湯に沈め、ふと上を、シャワーを見上げる。と、そいつが突然水を吐き出した。
 冷たい。なぜ水が出たのかわからないが、とりあえず止めなくては。湯から腕だけ出し蛇口をひねる。しかし、蛇口は堅く閉まっていた。水は止まらない。
 つぎにシャワーのホースを水道から引き抜く。だが水は、引き抜いたその部分からではなく、あいかわらずシャワーの口から出ていた。
 そんな水を出したままのシャワーを持ち上げ、洗い場の床に叩きつける。砕けるシャワーの口部分。が、それでも水は止まらなかった。
 破片を一つ拾い上げ、よくよく観察してみる。なんのことはない、水は水道からホースを経由して出ていたわけでなく、シャワーの口、あの小さな穴のそれぞれから直接出ている事がわかった。
 破片を洗い場の隅にまとめ、肩まで湯に沈める。足ののばせる湯船が欲しくなった。


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