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scraps.
■scraps #58
 竜子は椅子の上、背もたれに体を預けまぶたを閉じていた。読みかけの本は机の上、ページが開かれたまま放置されている。
 そこは橘家の所謂「書庫」であるが、整然と椅子が並んだ長いテーブルや吹き抜け二階建ての構造、壁を埋める背の高い本棚に収まりきらない本の様子は古い図書館を思わせる。音のない音を聞きながら竜子は目を閉じ動かない。
 暫時、というには少し長い時間の後、竜子は目を開いた。と、向かいの席に目を閉じるまでは居なかった者が居た。操である。竜子の幼馴染で、小さい頃はよくこの書庫でも遊んだ。そんな彼女は机に伏し寝息を立てていた。竜子は操を起こさぬように立ち上がり、彼女の傍らへ。
「操、こんなところで寝てたら風邪引くよ」
 囁きよりは大きな声で竜子。それに操は目を開けるが見えたのは寝ぼけ眼だ。
「うん」
 と答えはしたがすぐにまぶたが下りる。その様子にしかたないといった笑みを浮かべる竜子。隣に腰を下ろす。
「竜ちゃんはなにしてたの?」
 起きているのか寝ているのか、寝言のように操が聞いた。目も開いているような閉じているような。
「別に、なにもしてないよ。ちょっと一人になりたかっただけ」
 と竜子。その答えに操は目を覚ました。伏せていた身を跳ね起こし、不安げな表情。
「……邪魔しちゃった?」
 声にも緊張が感じられる。そんな操に竜子は柔らかく返した。
「全然。そういえば操はなにしに来たの?」
「竜ちゃんに会いに」
「そう、ちょうどよかった」
 と、操の頭を撫でる竜子。
「私も操に会いたくなったところだったから」


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