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scraps.
■scraps #56
 人の命が星よりも重いなんて嘘だ。無論、星のほうがはるかに重い。だから命を投げ出すなんてさほど大したことではない。
 君の編んでくれたシロツメクサの冠はすっかり色あせてしまった。
 いつもとおなじバスで学校にむかいいつもとちがって屋上にあがる。校舎の縁に立ってみると風は意外に強く冷たい。下を見れば事務的に手入れされた植え込みがある。四階建てでは目もくらむほどではないが、十分に高い。
 ひとつ息を吐くと僕は意を決して手にしていたカサカサの冠を放った。散る細かな花びらを軌跡に残し冠は植え込みを外れてコンクリートに落ちる。
 あの時の君とおなじ位置。
 チャイムが鳴る。僕は縁から引き返し屋上を去った。


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