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scraps.
■scraps #54
 目の前には扉があった。木製で、すすけた色が年季を感じさせる。中からは声が聞こえていた。泣き声だ。赤ん坊の泣き声。
 ――いや
 と、わたしは心の中でちいさくかぶりを振った。赤ん坊に似ているが、これは猫の鳴き声だ。盛りのついた猫特有の、気味の悪い鳴き声。それが2つ聞こえる。
 ふと、手の中に重みを感じ、視線を落とす。右手には金色の、これも扉と同じくすすけた鍵があった。おそらくこの扉の鍵だろう。なんとはなしに、鍵穴に鍵をさしこみ、まわす。
 ガチャリと小気味良い音と感触が手に伝わった。ノブをひねり、扉をひらく。
 先には四角い部屋があった。薄暗い、全面板張りの、すすけた部屋だ。真ん中に猫が1匹。黒い。これが声の正体だろう。
 首をまわし、部屋の中を観察する。おかしい。声は2匹分聞こえていたのに、この部屋には1匹しかいない。窓もなく、壁に穴もない。
 訝しむわたしは部屋の隅になにかを見つけた。なにか、抽象的な形をとる赤と肌色の造形物。いや、これは。
 鳴き声。
 はっと猫を見やる。黒い猫。口のまわりだけ赤く汚れた、黒い猫だった。シリアス。

 ……会社で書いた特に意味の無いもの。というか実験というか。最後の「シリアス。」は敵は海賊・猫たちの饗宴から拝借した、意味もなく。そんな感じ。


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