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■scraps #53
 トラウマドライブ(trauma drive)
 時は20??年くらいの近未来。人と人の関係はさらに希薄なものとなり、そのせいで人はふとしたことでトラウマを抱えてしまい易くなっていた。
 トラウマを抱えた人はさらに他人との接点を断つようになっていき、それは一種の社会現象と化し、その社会そのものを崩壊させんとしていた。
 その時である。ある研究チームの発表した新技術――トラウマドライブが社会を救った。
 トラウマドライブとは、トラウマを受けた、あるいはトラウマが再発した際に生じる精神的葛藤を物理エネルギーに転換するシステムであり、エネルギー化されたトラウマは物理法則に従い解消されるというものだった。
 このシステムによりトラウマから解放された社会は健全さを取り戻すことになる。
 しかし同時にこのトラウマドライブは新たな社会の歪みを産んだ。
 通常、エネルギー化されたトラウマは提携電力会社に搬送され、電力として社会に還元される。この搬送機能はトラウマ変換機(トラウマドライバ)への搭載が義務付けられているのだが、それを排除したトラウマドライバが出回った。
 トラウマドライバによって変換されたトラウマは純粋なエネルギーとなり、ドライバ内に蓄積される。このエネルギーはどのようにも変換可能で、電力化もその一例なのだが、例えば衝撃力や電磁波といったものにも変換できた。これにより、トラウマドライブを使った犯罪が発生することとなった。
 その傾向は通信のかく乱や情報操作から直接的な傷害まで多岐に渡り、社会は新たな不安の種を抱えることになった。
 とはいえ、トラウマドライブには使用者のトラウマが必要不可欠であり、大犯罪と呼ばれるようなトラウマ犯罪はトラウマドライブ登場以降、片手の指に収まる程度ではあった(対して軽犯罪に利用された件は枚挙にいとまがない。それほどトラウマドライバは社会に浸透していた)。
 そのような経緯で、トラウマ犯罪は問題だがさほど重大視するものでもないというのが一般の見解となったのだが、それでも過去、大トラウマ犯罪があったことは事実だった。
 大トラウマ犯罪の一例として、ある大手企業の情報すべてが流出した事件がある。歴史上初めて起きた大トラウマ犯罪だ。捜査は継続中で犯人は未だめぼしすらつけられていないが、状況からトラウマ犯罪であることがほぼ断定された。
 企業の持つ情報というものは膨大である。そのすべてを操作するほどのトラウマ力というのは、並みのものではない。それを生み出しうるトラウマとは。
 警察は早い段階で犯人を「真のトラウマ持ち」という結論に至った。現代の人間が簡単に負ってしまうような、ささいな傷ではない。真にトラウマになりうる経験をした者、真のトラウマを抱えた者が犯人であると。
 依然捜査は継続中だが、その最中にも数度、大トラウマ犯罪と呼ばれる事件は起きた。いずれも犯人不明。
 それはそれとして。そのような事件が起きてから、社会の裏で「オーバーロード」という言葉が生まれた。オーバーロードとはトラウマドライブを恒常的に駆使できる人間のことを示し、それこそ「真のトラウマ持ち」のことだった。

 ……という感じ。どんな感じやねん。久々にスクラップ。


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