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■scraps #20
 月の残る空が白みだし、薄い霧が公園をつつんでいる。
 そんな人影のない公園のひとつのベンチの上にカラスとウサギが座っていた。カラスは普通のものより一回り以上大きく、ウサギはそれ自身光っているように白い。
「さてもさてもウサギさん」
と、カラス。ウサギはそれに答える。
「はいなカラスさん」
「なんでも根の国から大きな影が消えたとか」
「消えてどこへいった」
「もちろんこの世へ」
「あれ、それは大事」
「我々にはあまり関わりないが、確かに人らには大事」
「どうにかなさるのかえ?」
「しない。柱を持った娘がどうにかしようて」
「どうにもならなんだら?」
ウサギの問いに、カラスは声無く笑った。あれ、つれない、とウサギ。
「影のひとつふたつ、お前さまなら容易く焼けように。あのようなもの消してしまえばよいわいな」
「消すのは容易い。しかし、しない。光と影は常に一対。その影を消すは容易いが、それはまたより濃い影を生んでしまう。影も害なら、光も害か」
と、うつむくカラス。その横顔を紅い眼で見つめ、ウサギは体をよせた。
「お前さまがいるおかげであたしがいる」
薄かった霧がさらに薄れ、日が昇り月も沈みかけ。
「時間だ」
「あれ口惜しい。時間を止めてみようかえ」
「そうもいかない」
言い、カラスは翼を広げ、体を宙に持ち上げる。
「また黄昏に」
「はいな」
カラスは飛び去り、ウサギもやぶの中へ。
 朝と夜の間は終わり。朝がくる。


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