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scraps.
■scraps #15
 ちょうどその女性が転んだのは私が先ほどつまづいたのと同じ場所だった。
 その女性はただの通りすがりで、私とは何の関係もない。だが、私がそうだったように彼女も何もない地面でつまづいたのだ。女性は立ち上がり、砂を払うと早々に立ち去った。
 私はその背中が見えなくなるのを待って、再び件の地面に近づいた。
 たいした人通りもなく、怪しまれることもないだろう。いや、怪しまれたとしても。今は好奇心のほうが勝っている。
 かがみこみ、調べる。まったく、なんの変哲もない、ただの舗装された路面だ。見るだけでなく、手で入念になでてみるが、やはりおかしなところはない。いや、あった。地面から手をひいたときにそれはおこった。
 いままで正常だった地面から手が伸び、私の手をつかんだのである。
 それも一瞬で、すぐに手は地面に引っ込んだ。肝をつぶした。あれはなんだ? 好奇心は膨らむ。
 地面を触り、なで、叩き、耳を近づける。穴を掘れるものなら掘りたかったがそれはかなわなかった。
 十数分もそれを続けた。しかし、あの手が再び出てくることはなかった。
 腰を上げる。あれは気のせいだったのか? そうではないと確信はしていたが、さりとて証があるわけでもない。
 ため息をひとつ。あきらめ、私はその場を去ることにした。
 きびすを返し、第一歩。私は転んだ。足に残ったのは確かにあの手の感触だ。


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