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■scraps #11
 この街、倉羅(くらら)市の真ん中には塔が建っていた。
 天高くそびえる、四方に大きな皿のようなアンテナを張り出した電波塔。だがそれは正確なところ電波塔ではない。何故なら電波を扱っていないのだ。それは純粋に「情報」のみの行き交う空間、通称「回廊」の中継施設であり、制御施設だった。
 二十一世紀初頭、「回廊」の発見は世界を沸かせた。「回廊」は理論上情報を減衰させることなく如何なる距離にも一瞬で届けることができる。当時、肥大化していく一方の情報に通信技術が追いつかず関係者たちの頭を悩ませていた。そんな中の「回廊」の発見だ。期待は高まり、そして「回廊」はその期待に応えた。数年の研究の結果、「回廊」が安定して運用されるようになると同時に世界の主だった通信手段はすべて「回廊」を使用したものへと移行した。その時分建設されたのがこの電波塔だ。「回廊」の監視制御の全てを担う施設。まさに「回廊」時代の象徴(モニュメント)だ。
「電線が無くなる日も近い」
当時流行った台詞だ。が、その台詞が現実になることはなかった。「回廊」を使用した通信機器全てに例外なくノイズが混じるようになったのだ。原因不明。除去も軽減もできないノイズによって「回廊」は廃れた。通信手段は前時代のものに戻り、象徴だった電波塔の意味も失われた。しかし解体にも莫大な費用がかかる。既に利用価値がなくお払い箱になったものにそのような金は動かなかった。結果、本当にモニュメントとして電波塔はそこに残されることになった。


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