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fox.
■明治38年の狐憑き
 家庭衛生叢書という明治38年出版の本を買った。その当時の家庭の医学のような本である。それには耳の摂生や乳児の衛生についてなどと一緒に「狐憑(こひょう)病とヒステリーの関係」という項もあった。狐憑病とはそのまま「狐憑き」のこと。妖怪や怪異に関係してない本にまじめにこういう話がでてくるあたり、江戸から明けてまだ38年といった感じである。

 容主は主に「ヒステリーとは」という感じで、かいつまんで記してみると、
「狐憑きや犬神憑きはヒステリーと同様なものであると言える。ヒステリーになった人間、またその周囲の心に狐憑きの伝承が刷り込まれているため、狐が憑いたようなことを言うのである。またそれを商売にしようという僧侶などの影響も大きい。このような迷信を少しでも払うため、筆をとったのである」
といったところだった。ので、対策(狐落としの方法)とかは書いてなかった。ちょっと残念である。まぁそんなんが堂々と書いてある家庭の医学もたしかに信用できない感じだが。

 で、書いた人が医者(医学博士)だからか「迷信」とすんなり断じているが、中にはヒステリーとの相違点も述べられている。それが狐憑きとヒステリーの伝染だった。
 ヒステリーなど精神的な疾患(と言うのか?)は、伝染っても2人、それも親子兄弟夫婦のように近しい者である。だが狐憑きは、ある家で起きたらその隣、また先といって村一つがまるごと狐憑きになる例もあるという。その件については言及されないままだった。
 なんとなく怪異な感じがしてよい。やはりただの精神的な病と断じてしまえないものがありそう。というかそうであってほしい。

 なんかそういう含みとかありつつな明治38年だった。
 虫食ってたし。


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