AREA513/contents.
novel.
■恐ろしきは食の恨みか
「じゃーん! 今日はビーフシチューを作ってみましたぁ!」
そう言って喜色満面に彼女は俺の目の前に皿を置いた。その上では赤茶色の半液体がのたくっている。
(これがビーフシチューだって……?)
たぶん違う。これは魔人を召喚するための鍋だ。あとは呪文を唱えるだけで世界は混乱の渦に巻き込まれるだろう。と、思いはしても可愛い彼女にそんな事を言えるはずがない。
「お、おいしそうだね」
なんとかそう言い、意を決する。対決の時だ。俺が勝つか、この魔人の鍋が勝つか。
 一瞬、溶けてしまわないかと心配しつつさじをものにつけ、引き上げる。さじの上でもものは大人しくならない。一呼吸おき口の中へ。そこまでが限界だった。さじを投げる。同時にさいも投げられた。角を生やした彼女と対峙する。
 本当の戦いはこれからだ。


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